蓮根の穴の向こうに何が見える?

上村 一宏 さん

上村 一宏 さん

1975年生まれ(39歳)
株式会社水の子 専務取締役/
有限会社祥豊 代表取締役
高校卒業後、ミュージシャンを目指すが断念。現在はレンコンを栽培し、水の子会の農産物を流通させ、加工も販売も受け持つという恐ろしい忙しさ!

2015.4.10
蓮根の穴の向こうに何が見える?
第15回は八代海に面した干拓地で、レンコンを作っている水の子会の上村さんを取材しました。上村さんのお父さんは現Radixの会会長(19・20期)上村茂則さん。日本でも指折りの有機農家を継ぐのはどんなワカモノなのか?
取材数日前には氷が張ったというレンコン畑。収穫風景を想像して震え上がりながら、在来種レンコンの、あ〜んな話やこ〜んな話をたっぷりと聞かせてもらいました。
  • 上村さんのところは代々農家なんですか?
  • 上村 アイコンここらは干拓地なんですが、じいさんが入植してきたんですよ。

  • 干拓地って、夢を追って「一発当ててやるばい〜!(熊本弁これで合ってる?)」ってイメージがあるんですが、希望すれば入植できたんですか?
  • 上村 アイコン手元にお金がないと入植できないし、いろいろと審査もあったみたいですよ。でもね、場所はくじ引きとか(笑)。時代ですね。じいさんは熊本空港が出来る時に土地を売って、そのお金でここに入植してきたんです。
  • レンコン栽培はその頃からですか?
  • 上村 アイコンイグサが最初です。干拓地には塩分が残ってて、野菜は出来ない、米を作っても立ち枯れする……この辺りはイグサだけでしたね。高度成長期でイグサは青いダイヤって言われるほどの農産物でしたから。現在は、水の子会では栽培しているんですが、うちではもう作ってなくて、レンコンとモチ米です。
  • 上村家がレンコンをつくり始めたきっかけとは何だったんですか?
  • 上村 アイコン父が農業を始めた頃、水俣病の患者さんたちと交流することがあったんです。自分のやっている、農薬をたくさん使う農業に疑問を抱くようになって、そこから有機農業を始めた。でも有機農業に向いている作物がなかなか見つからなくて、やっと見つけたのがレンコンだったわけなんです。
  • レンコンは無農薬栽培に向いてるってことですか?
  • 上村 アイコンアブラムシとか夜盗虫(よとうむし)とか、虫は付くんですけどね。

  • 虫がつく以外はカンタンなんですか?(笑)
  • 上村 アイコン理屈がわかればカンタン!(笑) 肥料が多すぎると虫が付く、そこのところのバランスですね。
  • お、さすがレンコンのプロ!とほとんど話も聞かないうちに持ち上げてみましたが(笑)。
  • 上村 アイコン実は全国的に見ても無農薬栽培のレンコンはとても少ない。しかもうちのは在来種ですしね。
  • ところで、上村さんが就農されたのはいつなんですか?
  • 上村 アイコン高校を卒業してから……なんですが、実はミュージシャンになりたくて、うちを手伝いながらバンド活動してました。
  • 干拓地近くの海

    干拓地だから海もすぐそば。大好きなメバル釣りにも熱中したいところだが、なかなか時間が許さない。月下美人という専用釣り竿まで用意してあるのにね!

  • 上村さんが学生の頃っていうと……
  • 上村 アイコン80〜90年にかけての空前のバンドブームの時代で、ユニコーンとかブルーハーツとか…僕はジュン・スカイ・ウォーカーズが大好きだった。バンドはプロ志望で、博多の有名なライブハウスでも演奏してました。一緒にやってた同級生、イチゴ農家の息子なんですけどね、いまだに音楽やってます。
  • じゃあ、なんでやめちゃったんですか?
  • 上村 アイコン自分で曲も作ったりしてね、音楽は本当に好きだったんだけど……う〜ん、やっぱりアマチュアのレベルだったんだろうな〜って思う。
(15) 水の子会 上村 一宏 さん