売り込まない商売とは

飯尾 彰浩 さん

飯尾 彰浩 さん

1975年生まれ(39歳)
(株)飯尾醸造 五代目当主
東京農業大学大学院終了。コカ・コーラ社で働いた後、29歳で飯尾醸造に戻り五代目見習いとなる。3年前、五代目当主に就任。酢造りは今年で11年目だ。

2015.2.5
売り込まない商売とは
第14回は「ワカモノに聞いてみよう」初の醸造業に携わるワカモノ、と言ってもすでに五代目の当主。「ワカモノと言うには…」とかごにょごにょ言う担当者に、「かろうじてワカモノと言える30代のうちに取材してくるんだ〜」というRadixの会事務局長の特命を受け、京都は宮津市に行ってきましたよ。
まずは当主自ら蔵を案内してくれましたが、こだわりの製法については飯尾醸造ホームページが超!充実しているので省略(楽しいので是非どうぞ)。知っているようで知らなかった「お酢屋さん」のことを飯尾さんから聞いてきました。
  • しょっぱなからすみません! 醸造関係の方って、大学は東京、ちょっと外で働いて蔵に帰って来た、地方なのにインテリ・オシャレな若旦那って勝手なイメージがあるんです…。それにしても30代で当主っていうのは若くないですか?
  • 飯尾 アイコン父は42歳で祖父から交代。僕は2年前に当主になったんですが、早い方がいいですよ。次の代が併走していって、あるとき完全に移行する方がリスクは少ないかと。
  • 醸造関係は他でもそうなんですか?
  • 飯尾 アイコン40前後で代替わりっていうのが多いですね。僕は大学で造ることの勉強をしましたが、経営系の勉強する人もいて、醸造関係では主に2種類に分かれますね。学校を出た後は同じ業界で修行っていうことが多いんですが、僕はまったく違うことを勉強してきました。
  • コカ・コーラに就職されたんですよね。すっごく気になることがあるんですが…実家が大きなお酢屋さんだと就職活動は難しかったんじゃないですか。またどんな奥の手を?
  • 飯尾 アイコンいやいや、うちは小さなお酢屋です。でも、大学院まで行って醸造関係の勉強をしたお酢屋の長男ですからね、就職活動は大変でしたよ。大手醤油メーカーやビールメーカー、最終面接まで行ったところもありましたけど落とされました。試しに「実家は普通のサラリーマンです!」って受けたところは受かりましたから(笑)。コカ・コーラは心が広いというのかな〜採用してもらいました。
  • コカ・コーラ太っ腹! では、お酢とは違う世界で学んだことは?
  • 飯尾 アイコン営業補助のあと営業企画と後半の2年間は営業教育のための講義、ワークショップをやってたんです。カリキュラムを作って全国を飛び回って講義する。だからどうすれば人に伝わるか、わかりやすい資料はどんなものかっていう勉強になりましたね。当時は20代の若造でしたから、4〜50代のおっちゃんに「営業とはなんぞや」なんて話を聞いてもらうのは、もう至難の業だったんですよ。
  • さっきの蔵見学での流暢な説明はその時代の賜物なんですね〜。
  • 飯尾 アイコンそうですね。それから、うちは小さなお酢屋ですから、大きな会社で勉強するのは意味がありましたね。組織のあり方は大きいところの方がよく見えるし、働いてくれている人たちがどういう気持ちでいるのかを理解するのに役立ちましたよ。
  • ところで、お酢は他の醸造関係と同じように需要が減ってますか?
  • 飯尾醸造工場の前で

    天橋立からは車で15分。穏やかな湾に面した飯尾醸造で酢造りの現場を見せてもらう。「僕だけじゃなくて、社員誰でも同じように案内できるんですよ」

  • 飯尾 アイコンここ30年で見てみると、実は少しづつ伸びてるんです。そこが醤油や味噌、みりんと違うところですね。
  • まさか飲むお酢がブームになったからとか?
  • 飯尾 アイコン実はそう。調味料としてのお酢は右肩下がりなんですが、飲むお酢で増えている。ただ新規参入も増えて競合も多くなるわけで、マーケットが大きくなるからいいというわけじゃないんです。
(14) 株式会社飯尾醸造 飯尾 彰浩 さん