一人のお客さん、一人の従業員を大事にしたい

一人のお客さん、一人の従業員を大事にしたい
  • 酢飯を作る飯尾さん

    おいしさを伝えるために、次は手巻き寿司を再流行させたいという飯尾さん自ら腕をふるってくれた。「食べ方までおせっかいすることで見えてくることがあるんです」という体験型食事会。

    • ご家族全員、お料理好きなんですか?
    • 飯尾 アイコン父は港で買ってきた魚をさばいて料理したりしてましたし、僕は小さい頃からそれを見るのが好きでした。大学の頃はパスタマシンや中華鍋まで買って料理にハマったし…。家族全員がよく料理をしますね。
    • お料理好きも役に立ってますね?
    • 飯尾 アイコン お酢がおいしいです!だけじゃ伝わらない。うちのお酢はどう食べるとおいしいですよとか、どう使うと体にいいですよとか。レシピをたくさん載せることは意味があるので、料理好きは役に立っていますね。
    • レシピ本は出版社に売り込んで作ったんですか?
    • 飯尾 アイコンうちは広告も打ちませんし売り込みは一切しない商売をしています。地道にレシピを掲載して200くらいが貯まったときに、出版社から話がきたんです。
    • 売り込みなしでNHKから民放、有名雑誌に取り上げられるのは、五代目の手腕ですか?
    • 飯尾 アイコンいやいや、それはネット社会になってきたことがきっかけだったと思うんですよ。取材にいらした方が、また別のメディアに紹介してくださったりと、連鎖もあります。もちろん取材の時の対応だとか、どう撮影してもらえば映えるかとかまですごく考えますが。
    • 蔵の入口と新しい工場

      昨年秋に出来上がった新しい工場には(写真下)、社員の方のことを考えたシステムがたくさん導入された。

    • 営業部も広報部もないのに(笑)。
    • 飯尾 アイコン今はね、取材で知り合った方に、うちより知名度は低いけれど僕が信頼している生産者さんを紹介したりしてます。そうすればまたそこが有名になる。先輩にごちそうになったら次は後輩に奢る番っていうのと一緒だと思うんです。
    • 宮津にはおいしいものがたくさんあるし。
    • 飯尾 アイコン京都から2時間もかかる小さなお酢屋に足を運んでもらうために、元気で面白いものがあればもっとお客さんが足を運びたくなるじゃないですか。
    • そして富士酢ファンがずっとお酢を買ってくれる、と。
    • 飯尾 アイコン一生使っていただくには、富士酢を好きになっていただいて、宮津に何度も来ていただく。そのためには地元の活性化は必要ですからね。幸い、海の幸、山の幸、歴史…都会にないものが全部揃っています!
    • お話を聞いていると、決して大きなお酢屋さんにすることが目標じゃない気がします。
    • 飯尾 アイコンうちのように小さいところは、一人のお客さんと一人の従業員を大事にすることを考えるべきだと思うんです。働く人を大事にして、蔵というチームで酢を作っていく。そしてお客さんには、おいしい酢を長く買っていただく。造る方も楽しそうに働いているっていいでしょう?もちろん働く人が楽しく働くためには、経営がちゃんとしていないとダメ。でも、やっていけるんじゃないかなって思っています。
    • どんな質問にも即座に答えを返す飯尾さん。そのテキパキとゆるぎない姿勢に「なんという自信家だー!」と思ってしまいそうになるが、実は、お酢を造って売ることにとんでもなく謙虚に取り組んでいる姿が見えてくる。飯尾さんのきめ細やかな心配りは、ずぼら担当者には学ぶことが多すぎる…と言ったところで、まんまとその戦術にはまって、いろんな酢を買ってしまった人間がここにいますよ。
    • 手巻き道とは

      手巻き道を極めるのは難しい…というのはウソ! おいしい食べ方をいろいろ伝授いただきました。野菜、イタリアンにこんなものまで〜という具材。手巻き寿司の可能性が無限にひろがり、体重が3キロは増えた宮津の夜でした。

    • 小さい生産者が生き残っていく方法、飯尾醸造にはそのヒントがたくさんありました。簡単に真似できるものじゃないですけどね!
    • (2014年9月8日取材)
    次回は熊本の水の子会で、れんこんとみかんの生産者のお話を聞いて来ます!
    (14) 株式会社飯尾醸造 飯尾 彰浩 さん