いいものを作っているだけじゃ伝わらない

いいものを作っているだけじゃ伝わらない
  • 離れで飯尾さんのお話を聞く

    「小さい頃から体が柔らかかった」などという、お酢屋あるあるを期待しましたが違いました。やはり酢の物が食卓に上がる回数が「異常に」多かったそうです。そりゃそうですね。

  • でも飯尾醸造には、新参者には絶対に獲得することができない「伝統」があるわけでしょう?頑固に作り方を守って来たという。
  • 飯尾 アイコンもちろん昔ながらの製法を守っていますが、実はマイナーチェンジを繰り返していて「頑固一徹守ってます!」というのとはちょっと違うんです。創業から同じ製法というのはクリエイティブじゃないし、面白くないんですね。技術も向上して来ていますし、原料を良くしたり量を増やしたり、時代に合わせたマイナーチェンジで少しずつおいしくしているんです。
  • あ、今、目から鱗が落ちました! 需要が増えてるなんて喜ばしいことですが、お酢業界にピンチの時代ってあったんですか?
  • 飯尾 アイコン昭和16〜28年、戦中戦後はお米からお酢を作ることが禁じられた時代で、その間にお酢づくりのノウハウが失われていったんですよ。
  • その時代、飯尾醸造は?
  • 飯尾 アイコン宮津近くに舞鶴というところがあって、そこには軍港があったんです。うちは海軍の御用達だったので、米を分けてもらって細々と米から酢を作っていたらしいんですよ。だから技術を失わずにすんだんです。
  • それは本当に幸運なことだったんですね。でもその後は「工場で大量に作ってるものって素敵」の伝統技術不遇の時代があったじゃないですか。
  • 飯尾 アイコンその後の「CMを大量に流している大企業の商品がいい」って時代もあって…、でも今は変わってきてますよね。
  • 飯尾さんのお父さんとレシピ本

    「僕は今ねコピー係なんだよ〜」とお茶目な四代目、飯尾さんのお父上。右のレシピ本は発売から7年経った今もとても好評だそうです。表紙は、撮影の合間に自分で着物を着付けたという妹さん!

  • 今は小さいところでつくっているものの方がカッコよかったり。
  • 飯尾 アイコン時代もそういうふうになって来ていますし、僕らも小さいところで作っているものがカッコよく見えるような努力もしていますからね。
  • それはホームページを充実させることだったり?
  • 飯尾 アイコン昔は観光バスで受け入れてた見学会をやめて、少人数に絞った蔵見学会にしたり、原料になる無農薬のお米を栽培している棚田で、田植えや稲刈りの体験をしてもらったり。富士酢をより深く知ってもらうために色々なアプローチをしていますね。いいものを作っているだけじゃ伝わらないですから。
  • ホームページはすごくわかりやすいのに、情報が満載ですもん。レシピもすごい量だし。
  • 飯尾 アイコン実はホームページの土台を作ったのは双子の妹で。母と一緒にレシピ本も出してるんです。この本の文章とディレクションは妹です。
  • 妹さん、何者ですか?(笑)
  • 飯尾 アイコン元々普通のOLだったんですけどね。

  • ご家族4人とも飯尾醸造の仕事に関わっていらっしゃるんだ。
  • 飯尾 アイコン父はご存知の通りぼのぼのしてるんです、僕と違って(笑)。

  • 否定はしません。五代目はグイグイってパワー系の感じ(笑)。
  • 飯尾 アイコン 父は農業や環境問題に熱心で、母は料理が得意でレシピを作り、妹は見せることが得意。4人とも性格はバラバラで得意なことも全く違う、全員が全く別方向を向いてるんです。でも、お酢屋を守ることについては全く同じ方向を向いている。
  • Tシャツ・てぬぐい・長靴
  • 飯尾さんのこだわりグッズ 田植え・稲刈り体験会必須アイテム
  • 棚田の田植え・稲刈り体験会ではコーディネートを競う「稲刈りファッションショー」もある。富士酢Tシャツ&手ぬぐいに加え「全体のイメージは足元から」と主催者が率先してフランスの長靴AIGLE(エーグル)でオシャレに決める。「7年使ってますが、丈夫ですよ!」