やりたいことは山ほどあるが、旅にも出たい

やりたいことは山ほどあるが、旅にも出たい
  • ゲストハウスの向山洋平さん

    「鶏舎に活性堆肥を敷いて、短時間でフンも分解するので鶏舎も清潔なんです。ここは一番上流だから水を絶対汚せないですからね」そう言えば農場は、鶏フン特有の臭いがしない。

    • 飼育環境の条件が厳しい上に、食べさせるものまでシビアなわけでしょう?
    • 向山 アイコンはっきり言って利益なんてほとんどないんですが、オーガニックのものを拡げていきたいっていう考えで、ある意味農場としての取り組みなんです。
    • ところで鶏っていつ卵を産むんですか?
    • 向山 アイコン 産むのは1日に1個。時間は関係ないですね。

    • 朝産んだり夜産んだりしたら集めるの大変じゃないですか。
    • 向山 アイコン習性を利用して小屋の中で産むようにさせる努力はしてます。巣外卵を減らすことも大事で、小屋の中で産むように躾けるとか。失敗すると1日3〜400個の巣外卵が出るので、巣やら止まり木やら、現場のスタッフ達がいろんなアイデアを出して工夫してますね。
    • あっちこっちで産んじゃうんですか?
    • 向山 アイコンそうそう、うちは活性堆肥を敷いてますがその砂の上で。いい卵なのに生卵として出せなくなる。

    • えーーー出せないんですか? もったいない〜。
    • 向山 アイコンいつ産んだものだかわからないですから。

    • ケージで飼えば、ゴロゴロって転がってくるわけだから楽なんだ。平飼いって、たくさん飼えないだけで、地面で飼ってればいいくらいに軽く考えてました。
    • 向山 アイコン20年前から地元の小学生向けに見学会をやったりしてるんですが、鶏に触れる機会ってなかなかないし、スーパーのパックが6個入りだったら一度に6個産むんだとか思っちゃう子もいるらしいんです。
    • 私もあんまり笑えないな(笑)
    • 向山 アイコン子供の頃に見学した人たちがもう親になってるんですよね。どんなところでつくられているか見て知っているから、子供たちにも安心してうちの卵を食べさせられる。
    • 上村さんのご自宅で

      オーガニックの農作物をつくる若い仲間もたくさんいる。「年配の方から積み上げてきた知識を引き継ぎながら、若い仲間で新しい試みをやっていきたいですね」

    • 実際に見てもらうっていうのは大切ですよね。ここに来る前にたまご村(直売店)に寄ってきたんですが、朝9時だというのにお客さんがたくさんでビックリしました。
    • 向山 アイコンうちは地元の人に支えてもらってますし、地産地消を進めたい。地元でオーガニックのものが広がっていけばと思ってます。
    • これから先は?
    • 向山 アイコン実は今年、社長を交代するんですよ。親父は5年前から現場は離れてるんですが、最終的な経営判断をしてくれてるし、責任の部分は社長にありますからね。やはりさすがだなって思います。
    • 今年から、責任の部分も向山さんの手に移るわけですよね。
    • 向山 アイコン生産体系を見直しているところで、経営理念も見直ししてみたいと思ってます。農業の独自性や想像力を大事にしたい。それから加工の方、商品開発にはもっと力を入れたいですね。店も増やしたいとかやりたい事はいろいろありますが、いっぺんにはできないので。
    • 旅好きの向山さん、少しうずうずしてるんでは?
    • 向山 アイコン旅にはもう一度出たいですね。具体的なかたちを考えてるわけではないですが、社会貢献的なことは日本に限らず是非やりたいです。僕も訪れた中東なんかひどいことになってますからね、何かしたい。でも、それをするためには成功して足元をしっかりさせてなきゃいけないですから、今は自分が出来る範囲のことをしっかりやっていくことです。
    • 平飼いを始めたわけ

      当時は窓が一切ない鶏舎でケージの中にぎっしり鶏を詰め込むウィンドレスが主流(もちろん現在も)。環境のいい開放型の鶏舎を見せたはずなのに子どもたち(向山さんの同級生)は……。お父さんが平飼いを始めるきっかけになった事件(?)。

    • 物静かに見える向山さんには、かなり大胆不敵でどんどん実行する活動的な姿が隠れています。お父さんが築き上げた農場を、どんな風にデザインしていくんだろう。子どもの頃から養鶏場は大嫌いだったのに、ここは絶対に再度訪れたくなる素敵な農場でした。
    • (2015年3月19日取材)
    次回は静岡有機茶農家の会の岩崎さん、飯塚さんを取材します。
    (17) 黒富士農場 向山 洋平 さん