クリエイティブも養鶏も同じものづくり

クリエイティブも養鶏も同じものづくり
  • 向山さんと夏の農場

    取材時のしっとりした景色(上)もなかなかだけど、こんなに美しい景色(中・下)に変わるのです。なんと幸せそうな鶏たちよ。

  • まだ30歳までは猶予がありますが、何をされてたんですか?
  • 向山 アイコン大学の時にデザイン論を選択して受講したんですが、それがすごく面白くて、漠然と映像の仕事をしたいなって思ってたんです。日本に戻ってきてから、コンピュータグラフィックスの仕事に就いたんです。最初はNHKの報道番組、その後プロダクションを移ってCMとかプロモーションとかの制作をしてました。
  • なんとまぁ! ということは、山の生活とはかけ離れた生活……徹夜とか日常でした?
  • 向山 アイコンう〜ん……あたりまえのように徹夜でしたね。でも、つくることって楽しいじゃないですか。ひたすら突っ込んでつくっていく。
  • ところでCGと卵の世界とはかけ離れてるような。
  • 向山 アイコン違う世界のようで、今やっている農業も養鶏も同じ。同じ「ものづくり」ですからね。やったことは現在に活きてくるし、必ず意味があると思ってます。今は店の印刷物や販売促進なんかに役に立ってますね。いいものをつくることも大事だけど、それをうまく伝えることはとても大事ですから。
  • ところで……「もういいや」って満足して帰って来られたんですか? 仕事も脂の乗ってくる年齢ですよね。弟に押しつけちゃえーとか。
  • 向山 アイコンう〜ん。クリエイティブの仕事はすごく魅力的な仕事でしたけど、親父も30年頑張ってきたわけだし、好きなことをやらせてもらったので、まぁいろいろ悩んだ末、最終的に戻ってきました。
  • 山梨に戻ってきて、規則正しい生活とバランスの取れた食生活も戻り……
  • 向山 アイコンそう。6時には起きて、夕方6時7時には帰ってきて……東京にいた頃はアボカドが大好きなので野菜はアボカド、それに家から送ってもらう卵で生きてました。
  • よく健康を維持できたというか、維持できてたのか?(笑)
  • 向山 アイコン今はおいしくなったみたいだけど、カルキたっぷりの東京の水に慣れるのに、本当に苦労しましたね〜。うちの鶏もカルキ入りの水は飲んだことないし。
  • 向山さんのところの鶏はエサだけじゃなくて、水もおいしいものを飲んでるんだ。
  • 向山 アイコン卵って水分が70%以上なんですよ。だから水の良さで卵が変わってきますね。親父が最終的にここに農場の場所を決めたのも、沢があっていい水が流れていたからなんですよ。水がいい場所じゃないと鶏がいい卵を生めない。野菜も鶏も、人間だって水が大事ですから。
  • あっ、ということは、今起きてる漏水って実は大変なトラブルじゃないですか。
  • 向山 アイコン沢の水を花崗岩でろ過してタンクに貯めて、それを鶏舎に引いているんですが、沢の水は蛇口をひねればどんどん出るわけじゃないですからね、ポンプをフル稼働で水を溜めてます。水が飲めないと鶏は餌を食べられなくなって、卵を産まなくなっちゃうんですよ。カルキ入りの水を与えれば、卵の味も変わっちゃう。
  • 向山洋平さん

    「初夏の農場は本当に気持ちがいいですよ」と向山さん。環境はいいけれど、子どもたちに通学の苦労はさせたくないと、現在は山の下に住んで通勤している。

  • 水がそんなに大事だったなんて…申し訳ないですが、漏水トラブルがなければあまり気にしなかったかも。ところで、有機JAS認定の卵を生産されてるんですよね。卵にも有機JASがあるなんて知りませんでした。
  • 向山 アイコン卵で認証をとっているところは日本で3軒しかないんです。うちでは全てNON−GMO(非遺伝子組み換え)の飼料を与えていますが、GMO(遺伝子組み換え)の飼料より高価ですし、有機JAS認定の鶏に与えているオーガニックの飼料は、GMOの飼料の3倍の費用がかかるんですよ。
  • ジンジャースプリング
  • 向山さんのこだわりグッズ ジンジャースプリング
  • オーガニックエキスポで見つけたオーストラリアのジンジャーエール。「めっちゃうまいんで、定期的に購入してるんです」オーストラリア独自のレモンマートルを始めハーブたっぷり!(おいしいけど、男子はまず逃げ出すハーブてんこ盛り)「この人はラベルが気に入ってるのよ〜」とお母さん。