キツイけれど、少しずつ進歩が見えた

キツイけれど、少しずつ進歩が見えた
  • 柴田さん

    「ホウレン草とか葉っぱをつくるのは楽しいな! 味も見た目も、いいものが出来たときは嬉しさが違いますからね」忙しい農作業も、冬の寒さも、何でも楽しんでしまう柴田さんは、とっても肩の力が抜けています。

  • そういえば利波さん「自給自足に憧れると挫折する」という定説をくずしたのはどうやって?
  • 利波 アイコンいろんな産地を見たおかげでしょうか。最初に行ったところはまさに自給自足を絵に描いたような、パン屋と農場がくっついていて、鶏も飼っていて。そんなところだったのに、実はそれが合わなかったんですよ。野菜をただ作ってるだけで技術を求めてなかった。「そんなんでおいしいものができるはずないじゃないか!」って。
  • 研究者肌の利波さんにはオシャレ農場は反面教師だったか〜。今は自給自足してます?
  • 利波 アイコン今は出来てないです。野菜を作り始めたら、たくさんの人に食べてもらいたいって考えるようになってきたので。
  • 柴田 アイコン僕は自給自足というか百姓になりたいと思ってますね。身の回りのことは全て自分でやれるようになりたい。百姓っていうのは百の商売ができるって意味だと思ってます。
  • ところで休みがなくて嫌になっちゃいませんか。ほかにも大変なことが絶対にあると思うんだけど。
  • 柴田 アイコンオレはいいんですけどね、休みがないとだんだん奥さんがキレてきます(笑)。

  • 利波 アイコンあははは、うちは奥さんはお手伝い程度なので。そうだなぁ……、新規就農で入ってきたら機械もハウスも何もないじゃないですか。10年くらいかけてちょっとずつ増やして、今やっと落ち着いたところ。「あー楽になったなぁ、こんな風に生活できてるのって楽だなぁ」って思うんですよ。
  • 利波さん

    まったく畑違いの勉強だったけれど、工学だろうが農業だろうが取り組み方には違いはないそう。技術が必要な中玉トマトの栽培には研究者魂が燃えるらしい。

  • 柴田 アイコンそうだよね。もちろん貸してくれる人もいるけどそれも限界があって、やっぱり自分で揃えなきゃいけない。
  • 利波 アイコン 7年くらいが転換期かな。技術もついてきて資材もついてくる、そうすると収量も増えてくる。最初は資材を買うお金もないから「あれやりたいけど、お金がないのでちょっと手間かけるか」とか。それがだんだんに楽になってくる。大変だった時を覚えてるから、大変なことが見えなくなってきてるというのが正直なところかも(笑)。
  • ここみたいなバックアップがあるところでも新規で始めるってのは大変なんですね。
  • 柴田 アイコン2年前の豪雪被害でハウスがつぶれちゃって、去年やっと修復できた。ものすごく大変だったのに、農業を始めて1、2年の頃を思い出したら何でもないんですよ。そのくらい大変だったかな(笑)。そこでやめなかったのは選択肢がなかったからだけど、毎年なんとなく良くなって、ずっと希望は感じることができましたからね。
  • さて、柴田さんは山買って馬飼って……将来の夢は決まってますね。
  • 柴田 アイコンいや、それだけじゃないです。カフェをやりたいんです。それはどちらかというと女房の方が、ですけどね。農業は生活、やりたいことは遊びの部分だったりします。
  • 夫婦で同じところが目指せるのっていいですね。利波さんは?
  • 利波 アイコン去年一昨年から、地元の人たちで集まってイベントをやったりしてるんです。農家だけじゃなくて色々な職業の若い人たちで。それをもっと盛り上げていきたいですね。
  • 柴田 アイコンやっぱり町を活性化させたいですよね。まだまだ子供も少ないですし。草の会も高齢化してますから、グループ自体も盛り上げて存続していきたいですからね。
  • 柴田さんは大きな病を克服したから、農家になることにご両親も反対はないと思うんだけど、利波さん、工学系の大学行ったと思ったら農業始めるし、群馬に落ち着いたと思ったらそこに家を建てちゃうし。ホタルイカの季節に帰ってみようとか、親御さんをこっちに呼ぼうとか、ないんですか?
  • 利波 アイコン相当いろいろ言われましたよ、長男ですしね(笑)。ホタルイカ?それあんまり魅力ないや〜。両親を呼ぶのは、本人たちが来たければどうぞって。
  • やだ、何よその上から目線は(笑)。

  • 一度は憧れる自給自足生活

    ステキな響きをもつ魔法の言葉「自給自足」。とってもオシャレだったり、ほとんどサバイバルだったり、自給自足にもいろんなかたちがありますが、利波さんが体験したのは……。

  • くらぶち草の会が新規就農者を引きつける理由が全て理解できたわけではないけれど、この土地に根を生やしたいと思わせる、とても魅力的な場所だというのはわかりました。山を手に入れ、町を活性化させ、もっともっと若い人たちを増やしてください。
  • (2016年2月24・25日取材)
次回はひき続き「くらぶち草の会」の森清和さんと佐藤陽亮さんを紹介します。
柴田 勲 さん 利波 浩樹 さん