ワカモノ応援団を紹介するよ

農民連・奈良産直センター/一穀あすか
  • 森本さんと小西さん

    熱き男、産直センター副理事・一穀あすか事務局長森本さん(上)と、淡々と激務をこなす、産直センター事務局小西さん(下)

  • 農民連・奈良産直センター

    農家の味方!農民連・奈良産直センター

  • 「一穀あすか」の畑とタケノコ園

    産直センターの下に広がる、美しく整えられた「一穀あすか」の畑とタケノコ園

  • 「あすかベリー園」

    ブルーベリー狩りができる「あすかベリー園」は近所の幼稚園児も体験に来ます

  • 整備した果樹園から、明日香村を見下ろす

    整備した果樹園から、明日香村を見下ろす。すぐそばには古墳もあります

  • 「のらのわ耕舎」

    産直センター向かいにある養鶏場。建設予定地が使えなくなり、困っていた新規養鶏家「のらのわ耕舎」の中村彰宏さんに「一穀あすか」が土地を貸し出したもの。なんというゆったり鶏舎!お米育ちの鶏が生んだ、こだわり卵です

 今回訪れた奈良県明日香村は高松塚やキトラ古墳をはじめ、少し歩けば古墳にぶつかる、というマニア垂涎のいにしえの地です。「古墳が多いと土がいい?」……不謹慎な考えがよぎる中、観光の車も行き交う丘の上の施設に到着。美しく整備された畑を見下ろす農民連・奈良産直センターで、副理事の森本さんと事務局の小西さんにお話をうかがいました。

 奈良産直センターに登録している生産者は「今週は5パックだけね」というおばあちゃんから、大量出荷する組織までさまざま。取引先も生協や学校給食の大口から、小さなレストランなどの小口まで多岐に渡っていて、取り扱い品目もとんでもない数です。事務局の苦労はいかばかりか?といらぬ心配をしてしまいますが、この産直センターがあったからこそ、松井さんのような新規就農者も安心して農業に取り組めたわけです。
 「価値をわかってくれる取引先を開拓して、奈良ならではの農産物をどんどん拡げていきたいと思っています」という副理事の森本さんですが、実は別組織「農事組合法人 一穀あすか」で後継者の確保と古き良き農地の保全にも取り組んでいます。

 「30年間で3」とは明日香村で親の跡を継いだ農家の数。この危機的状況に「これまでのやり方では明日香村の農業はなくなってしまう」と、地元農家で「一穀あすか」を立ち上げました。また明日香村には明日香法(古都保存法対象地)という法律で土地開発が難しいというハードルもあり、景観を残すこと=農地を残すことにはつながっていないのが現実です。
 「一穀あすか」ではそんな状況を少しでも打破しようと、遊休農地の活用と新規就農者のバックアップに取り組んでいます。
 各都道府県でも「遊休農地の貸出はじめました!」という話は聞きますが、外から来た人間がその土地に根を下ろすということは、そんなに単純ではないはず。「後継者はいないが、どこの馬の骨ともしれない人間に簡単に土地は貸したくない」というのが、乱暴な表現ですが本音ではないでしょうか。
 「一穀あすか」では遊休地を借り上げ、しっかり研修を終えた新規就農者に土地を貸すという方法を採っていますが、農家で組織された団体の後ろ楯というのは、貸す方、借りる方、双方にとって安心できる保証のようなものです。
 就農希望者はなかなか多いそうですが「続けられるかどうかは、ほとんど電話でわかるんです。会って、作業を少ししてみればもっとはっきりします。基本は情熱と体力だけど、ご飯を食べて行くには経営力は不可欠ですね」とのこと。現在、30代を中心に5組が就農を始め、後には研修生も控えているそうです。
 また新規就農者支援の他に、農地の整備はもちろん、竹ボーボーの耕作放棄地を「いっそのこと収穫体験地に」と整備したタケノコ園(グッドアイデア!)、休耕田を再生利用した無農薬ブルーベリー園、農業体験の出来る圃場など、明日香村に人を集める交流活動にも力をいれています。

 昔は多かった仲人おばさんの「山田さんとこの娘は年頃じゃない?だれか探さなきゃ」「鈴木さんとこの娘は少々トウが立ってるけど、今度来た元気な若い子ならいいわねぇ」という会話を農地に置き換えるなら、「山田さんとこのじいちゃんがそろそろ亡くなりそうだよ。畑を耕す人だれか探さなきゃ」「鈴木さんとこは休耕地になって長いけど、あの元気な若いやつなら大丈夫じゃないか?」となるんでしょうか。地元のことがわかっている農地仲人さんは絶対不可欠です。

 農地を守りたい人、農業を始めたい人。その人たちを結びつける「一穀あすか」のような組織が全国のネットワークでつながれば、もっと農業従事者が増えるはずなのになあ…と古代文化の香りを感じつつ思う担当者でした。


  • 農民連(農民運動全国連絡会)と農民連・奈良産直センター
  • 一般の人にはあまり馴染みのない農民連ですが、福島原発事故後、東電に牛を引いての抗議活動は記憶に新しいところ。そんな活動とは別に、栽培についてはもちろん税金や各種申請の相談から食品分析まで、農家をあらゆる角度から支える組織です。農民連は都道府県ごとに組織されていますが、県農民連に所属し、産直に特化した流通組織が産直センターです。
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